第25話|喪失感...そして得たもの

これで、この土地についての話はおしまいです。


こうやって唐突に破談になるまで、週末ごとに秦野に通ってはビニルハウスをたてる場所を検討したり朝5時に行ってみて朝日の当たる時間や角度を検証したり、茶畑をもっているお茶やさんに挨拶しに行ったり、秦野の図書館に行って年間降雨量を調べたり、にいにやぽちんの友達が来たらどこで遊ばせようかと下見までしていました。いろいろな不安はある一方で、やっぱりここが好きだよね、と夢もふくらませていたんです。


でも、すべて、パー。

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わたしたち、何がいけなくて、こんなことになっちゃったんだろう・・・


わたしたちは振り出しに戻されてしまいました。いや本当はね、その後1ヶ月くらいは、まだ諦めきれなくて、Sさんに直談判したりしてたんです。右側の土地を買ってしまったヒトから、あの土地を地上げしてくれないかって。かわりの土地をわたしたちが探すから、どいてくれないか。お金も積みます。とまで言いました。


でも、案の定、それは受け入れてはもらえませんでした。
「無理ですよー、相手の方もあすこが気に入ってますし。」そりゃそうだ。気に入って、大枚はたいて買った直後の土地を「そんなに気に入っていらっしゃるんでしたら、どうぞ」なんて譲ってくれるわけがない。


それでも目の前の現実をそのまま受け入れることのできなかったわたしたちは、「ひょっとしたら、転売目的に買っていて、まだ使ってないかもよ」なんて思い、酔狂にもノコノコと土地の様子を見に行ったりもしたんです。


でも・・・目にした現実は、けっこう寂しいものでした。

茶畑のむこうにある、あの高台には、スクラップされた廃車が堆く積まれていました。ゆずの木のある隣の土地は、ぽっかり淋しく空いたままでした。


それが、わたしたちが見た、この土地の最後の状態です。


こうやって書き連ねていると、あのときの喪失感がよみがえってきます。わたしたちの、何が悪かったと思います?値切りすぎ?判断が悪かった?きっと、どれも原因だと言えるでしょう。で、「いちばん大きな理由は、その土地が欲しいという気持ちが、足りなかったのです。」なんてコトバで締めくくると、おさまりがいいかもしれません。


でも本当は、今でもまだよく分からないんです。
振り返って検証することは容易でも、その場ではその行動しかとれなかった、ということもあります。運、も多分にあります。あと、わたしたちのこの変更不可能な、性格も、大きく作用しています。


何が原因なんて、一言では言えない。


土地を買う、ということは、そのプロセスの中で自分たちの持ち合わせている人格、運、能力、環境、すべての要素の過不足やバランスをみずからガツンと思い知る作業だな、と感じました。普段はやんわりと隠されている自分たちの本質と、対峙せざるを得ない場面がある。
それは本当に、説得力のある実感として、ずっしり残ってしまいます。


あはは、大げさですかね。
まあ、こうやって失敗があったから、特にそんな感想を持ってしまうのかもしれません。それでも今は、こういう経験があってよかったなあと、幸いにも思えています。この後、まだまだ土地探しが続くのですが、この時の苦い経験が生かされている場面がなくもないです。


それから、あえてよかったことを加えれば、家族の絆、夫婦の絆も、ちょっとは強まりました。そりゃね、同じ船に乗って生きているわけですから、そもそもすべてタニンゴトではないのですが新天地に土地を買い、あんなことやこんなことをしながら、子は育ち、共に老いていく・・・という未来像を何度も何度も一緒になぞらえながら夢を現実化させていく作業には、お互いのことが腑まで分かってしまうようなディープな関わりが不可避なんだと思います。


それなりにエネルギーを要することなだけあって、お互いの間にある種の感情が蓄積されたりもします。平たく言えば、何があっても一緒にがんばっていこうね。みたいな。(っていうと美しいですが、意見の食い違いでぶつかり合ったり激論を交わしたりしてがっぷり四つに組むことで、潜在的に軟弱地盤だった部分が自覚され、たたき上げられ、強化されていく、というのが正直なところ。)


こどもたちだって、親がふたりして、なんか一生懸命苦労してやっている姿をみているわけだからめでたくどこかの土地を入手した暁には、「ぼくたちのためにありがとう」と感謝してくれることと思います。(・・・わかってます、こんなこと言うガキはいないって。っていうか、こどもたちが親に振り回されているという方が正しい。)


そんなこんなありましたが、悔し涙が迸って地団太踏んで後悔しても、歩みは止めないわたしたち。このあと何とか立ち上がり、顔を洗って出直して「物件検索奉行」から再出発するお話はまたこんどです。

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このブログについて

平日は多忙なサラリーマン、だが休みとなると植物栽培マニアと化す夫。膨大な数の珍植物が自宅からあふれ置き場所に困り果てた挙げ句、夫婦の選ぶ道は「田舎で地主になる!」。植物と人間にとって理想の土地を探し求めることに決して妥協しない彼らの「とんでもない紆余曲折」を、赤裸々に綴ったブログ。

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Miori
子供や夫や動物を育てるのが趣味。カフェの窓際でのんびり読書する時間と、家でのんびり造顔マッサージする時間が持てれば幸せ。と、ささやかに都心のインドア生活を楽しんできた主婦が、突如「田舎の土地をゲット」するために髪を振り乱して奔走しはじめる。結婚相手によって、人生が激変することを実感中・・・

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