第21話|信じない者は救われない

わたしたちの夢にぴったりだったこの土地は、今は他のヒトのものです。(少なくとも半分は。分かっている範囲では、石垣さんの土地はすでにヒトの手に渡っています。でも、ゆずさんの土地はまだ売り出し中かもしれません。)


わたしたちは、みすみす、理想の土地を逃してしまいました。なぜそんなことになってしまったのか。


一言で言えば、慎重になりすぎて石橋を叩いて叩いて叩きすぎて叩き割ってしまった。素晴らしい土地ではありましたが、現実問題として売買契約前にクリアせねばならないと思われる課題がぼこぼこ出てきて、それにいちいちつまづいて悩み、対処が潔くなかった。


そうこうのろくさしているうちに、買うことそのものへの迷いも出てきて、さらに決断に時間がかかってしまった。そしたら、とんでもないところに伏兵がいて、どんでんがえしで全部パーになった。というわけです。


ぜんぜん分からないでしょう。今から説明します。

違法建築、どうしよう
前にちょっと触れましたが、この土地には、ふたつの建物が建っていました。ひとつはガレージ、ひとつは現場小屋です。現場小屋に関しては、売り主さんサイドでばらして撤去してもらえるということになったのですが、ガレージ、そう、とても素敵な景色が眺められる物見台のついたガレージが、問題でした。


実はこれ、違法建築だったのです。
この土地は、調整区域といって基本的には建物を建ててはいけない区域なのですが、「既存宅地」部分だけは家が建てられますよ、となっていました。ガレージは、その範囲には建っていなかったのです。もし、わたしたちがこの土地に家を建てるとなると、確認申請なりなんなりで役所が絡んできますよね。


そうしたら絶対「このガレージ、なんですか。違法ですよ、撤去してください」と言われるのは目に見えている。ただこれは、売り主さんの費用持ちでは壊さない、という。


現場小屋はばらして他で組み立てることのできるものですが、ガレージは単に解体費がかかるだけの代物だからそんなことやってはくれないのです。基本的には、土地は現況渡しですので。


いかにも頑強そうで魅力的な建築物であったのですが、そういう目で見ればこのガレージも壊すのにとっても費用がかかるようなやっかいものに見えてきます。まあ、そのときひとつの対処法として、「いーやいーや、役所に言われるまでだまってれば。だって、撤去しろといわれない可能性だってあるんだから」と問題を先送りにする方策もありました。でも、まったく無視するわけにはいかないし、やっぱりあとでごたごたするのも嫌だと思いました。


で、しかたがないから「こんなものがついているんだから、値引いてよね」と、土地の減額交渉のネタにしようということになった。値引きというメリットをあてがっての辻褄合わせ。それでもなんか、気持ちよくなかったです。本当はこのガレージ気に入っているし、あったほうがいいなと思っているのに、壊さなきゃならなくて、壊すのには費用がかかるなんて。それに、そんな面倒ごとのくっついている土地は嫌だな、などと迷いを生じさせることになったと思います。


・・・ああ、今考えればなんてくだらない悩みだったんだろう!
今のわたしたちだったら、とりあえずは撤去しないでおくだろうな。で、もし役所に文句いわれたら『今までずうっとこのガレージは存在してたのに、そちらさんが見逃しておいて、
気づいたときだけ文句言うなんておかしいじゃないですか。そんなダブルスタンダードは通用しない!!』とかなんとか屁理屈こねて、見逃してもらおうと画策したと思います。


すべてのリスクを回避しようと思わず、プライオリティを常に考えて決断、行動すべきなんですね。本質的ではないことを、くそまじめに捉えすぎて、疲れてしまったのは、本末転倒でした。でも、こういうよくわからないことを見極めるのって、難しいですよ。ホントに。


やっぱり道がついていなかった
またですよ。ここも、実は、道ナシ物件だったのです。いえ、土地そのものにアクセスする道はついてたんです。車で乗り入れることができたのですから。問題は、「接道していない」ということです。


よく考えると、とてもばかばかしいんです。
すでにアクセスするためのご立派な道はあるのに、もう一本、宅地に接する道をつくらなきゃならないなんて。しかも、既存の道との接道部分に3m以上の段差があるので、そこを階段か、スロープにしなきゃならない。階段はお金がかかるからスロープにしましょうとなると、これが30度くらいの登山仕様のスロープになる。


計画の段階からトマソンみたいなものに100万単位のお金を使わねばならないなんて
アホくさくて鼻血が出そうです。で、市役所に行って抗議すると
「でもね、基準法で決まってますから。急勾配でいいから幅員2mの道つけてください。」
・・・ってえと、おまえさん、あれかい?命綱でもつけて登れって云うんかい?
いやまあ分かってはいましたが、法律っていうのは時に何とも無意味なことを市民に強要するのだと実感しました。お役人たちの遵法精神満載のガチガチ脳味噌を、柔軟剤に漬け込みたくなります。


このことに関しては、話を詰める前に売買契約そのものが破談になってしまったのですが、
思い返すと今でも腹がたつ!ちゃんちゃん。


井戸の水は出るのか?
この土地も、水は井戸でまかなえ、というところでした。
というか上下水道はとおっていなくて、既存の井戸があり、掘れば出てくるだろうという話。確かに、昔使っていた井戸が残っているんです。これ、本当に使えるんですかねえと聞くと
「昭和49年まで使ってたみたいです。そのあとは脇に流れている渓流を横引きしてたらしいけど、当時の地主がそのことで、隣近所と激しくもめたらしくてねえ。まあ、井戸使っておくのがいちばんいいんじゃないかと思いますよ。いろいろ、あれですし。え、水が出るかって?多分出るでしょうけど、掘ってみなけりゃ実際のところはなんとも・・・」

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これが・・・問題の「井戸」。
出るのか!出ないのか!半か丁か!!


Kさんにそんな話を聞き、ちなみに井戸を掘るのってどれくらいの費用がかかるんだろうと調べると1m掘るのに1万円。水が出るまで掘れば100mだから100万円。そこまで掘っても出なきゃ、100万円はパー。ということでした。


で、近所で井戸使っているヒトはいるかなあと探すも、この辺りはみんな渓流から上水を引っぱってきている。えーーー、水が出るかわからん土地なわけーーー?ってことになり、これは相当悩みました。


市役所行って確かめたりとかいろいろしましたが、やっぱり掘ってみるしかないらしいんです。そりゃね、掘って水が出てくりゃいいんだけどさ、土地買う前に掘って確かめるとしても作井工事の費用はこっち持ちだっていうじゃないですか。


「まあ、多分大丈夫でしょ。」で見切り発進してよいのかどうか、悩みました。うーんと。あなたなら、どうします?わたし、今だったら、100万つっこんでもいいって腹決めて調べてると思う。でも当時は、100万はでかいよなあー、この土地に投資していいのかなあーと悩むだけで、終わっていました。リスクを恐れて悶々として時間を浪費するくらいなら、調べりゃよかったんです。本気で惚れた土地なら。


あるいは、井戸がダメなら水道を本管から引っぱってくればいいと思えばよかった。(まあ、とおーいところに本管があったので、工事にはどんとお金がかかる。これも厳しい選択ですが・・・)言ってみれば、面倒な土地ではあるんです。


そもそも、分譲の宅地を買うのとはわけが違って、現況優先で条件がいっぱいくっついてくるわけだからそれをうまく整理して飲み込んでいかねば前に進まないのです。


でもね、それって結構難儀なことなんですよ。インターネットで調べると、こんな土地やあんな土地を買ってしまって後悔している、っていう話がぼこぼこ出てくるし、わたしたちのまわりの人間に相談しようものなら、「水がでるかわからない!?そんな土地、悪いこと言わないからやめときなさい」という話にしかならない。そこで、冷静に自分の購買意欲と土地条件を折り合わせ、時には、賭けさえ、できるかどうか。賭けに負ければ損をしますが、賭けさえもしなければ、今度は他人にチャンスがまわされる。


・・・そう、この土地を欲しがっているヒトが、わたしたちの他にもいたなんて、全然知りませんでした。こうやってわたしたちが道だ水だとじくじく悩んでいる最中に、目の前でぱっと、他人に奪われたんです、この土地。(これぞまさに、「トンビが油揚げをさらう」。いいコトバ、みつけた!)っていうわけで結局調べてないので、今でもこの井戸から水がホントに出るのかどうかはわからないんですけど。

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このブログについて

平日は多忙なサラリーマン、だが休みとなると植物栽培マニアと化す夫。膨大な数の珍植物が自宅からあふれ置き場所に困り果てた挙げ句、夫婦の選ぶ道は「田舎で地主になる!」。植物と人間にとって理想の土地を探し求めることに決して妥協しない彼らの「とんでもない紆余曲折」を、赤裸々に綴ったブログ。

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Miori
子供や夫や動物を育てるのが趣味。カフェの窓際でのんびり読書する時間と、家でのんびり造顔マッサージする時間が持てれば幸せ。と、ささやかに都心のインドア生活を楽しんできた主婦が、突如「田舎の土地をゲット」するために髪を振り乱して奔走しはじめる。結婚相手によって、人生が激変することを実感中・・・

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