房総PEOPLE 第1回  チーズ工房IKAGAWA・五十川ご夫妻
text= 大我 さやか(OpenA Ltd.)

岩盤を掘って作った洞窟で熟成されるチーズ。

牛が教えてくれること

五十川夫妻のチーズはただ美味しいだけではない。あるとき夫妻が1ヶ月期限の過ぎたチーズを試しに食べてみたところ、味が全然変わらなかったという。市販されている食物は1ヶ月もたてば腐臭が漂い、とても食べられるものではない。これは房総の環境の良さを示しているのだ。

モッツァレラのようにまったりとして優しい奥さんと、サワークリームのようにフレッシュで若々しい旦那さん。

五十川さんのチーズは防腐剤も保存料も入っていない。ひとえにこの房総の穏やかな気候と養分豊かな大地の牧草を食べて育った牛たちの、なんの混じりっけない乳から作られたものだからこそ、腐らずにいるのだ。

「食べ物が腐るのは、未熟なまま刈り取ったり、肥料が合わなかったり、何か混ざった物だから。元気に育った野菜や牛の乳は時間が経っても腐らないで、萎れていくだけ。これまで自分が食べてきた物や市販されているものはどれだけ色々な物が混ざっていたか、牛たちが教えてくれた。」と奥さんはいう。

房総の自然は、私たちに食べ物の本質的なあり方を教えてくれるのかもしれない。


房総で農家として再スタートしたい人、求ム。

五十川夫妻のチーズ工房では、体験工房も行っている。体験といっても、牛の乳を搾ったり、チーズ作りを遊び感覚で体験できる生易しいものではない。工房の隣のご自宅の1部屋を借り、2泊3日の泊まり込みで朝から晩までチーズ作りを本格的に体験するというプログラム。若い人やこれからチーズ作りをやりたい人が、チーズをつくるという仕事を体験でき、今後の方向性が描けるような場をつくることが大切という思いから、貴重な場を設けてくれている。朝夕の搾乳とチーズ作り。全てが詰まった2泊3日なのだ。去年の夏には畜産系の大学生が3週間ほど実習にきたほどだ。
東日本大震災を受け、農業が続けられなくなってしまった東北の農家の人々が、この房総で農家として再スタートできれば。五十川夫妻は同じ農家として、そう願っている。もう空家になってしまった民家や耕作放棄地を、東北の人々に提供し、この地で農業を続けてほしい。もし、この記事を読んで、房総の地で農業を再スタートさせたい人がいれば、是非私たちまで声を掛けしてほしいと思う。


五十川夫婦の手作りチーズを販売中。
「チーズ工房 IKAGAWA」公式HP
http://milky.geocities.jp/cheesekoubou/