こだまや

text / photo = 大我さやか(Open A)

お客さんが来ると駆け寄って来てくれる、こだまやのウエイトレスのお子さんたち。

インドカレーと絵本の店こだまや

一松にある交差点を曲がってすぐの「こだまや」。看板の「インドカレー」の文字とは不似合いな普通の民家のような出立ちに、これまた普通の畳敷の部屋に案内される。壁一面にずらっと単行小説や雑誌が並ぶ。料理を待つ間、お客は思い思いにそのちょっと懐かしい本を手に取り、畳に座る。まるで田舎の実家でのんびり暇を潰しているような気分だ。

 

店の奥には可愛らしいピンクに塗られた部屋。子供たちが絵本を読んだり、戯れて遊んでいる。ふと気づくと隣の大人たちに子供が駆け寄ってきて、楽しそうにしゃべっている。そうか、この人の子かと思っていると、その子はまた別の大人のテーブルに潜り込んでいる。そうしているうち、今度は自分たちのところにやってきて、これ触って! と氷の入った袋を差し出す。

 

実は、この子たちはお店の子供たち。
なんの屈託もなく戯れてくるので、ついつい親戚の子供のように可愛がってしまう。このお店のウエイトレスはこの子たちなのだ。
そうしていると、本格的なインドカレーが運ばれてくる。畳でインドカレーとはまた変な気分だが、豆や香辛料をたっぷり使ったカレーは、スパイシーだがどこか優しい。このお店の雰囲気そのままなのだ。空間も、BGMも、本も、子供たちも、ついほっとして食べ終わってもぼーとくつろいでしまう。(お店は混んでいるので、そんなことをしては実は迷惑かもしれないが・・・)

 

ここにこだまさん一家が店を開いたのは1年前。元は都内で会社勤めをしていた旦那さんが、子育てと独立して飲食店を出したいという夢のために選んだのが、この何の変哲もない一松の民家だった。飲食経験のない旦那さんが、よく通っていた神保町のカレー屋で、カレーなら煮込むだけだから俺にもできそう!と思ったのがはじまり。だが、なぜか修行を始めたのは、洋風ではなくインドカレー。蓋を開けば手の混む難しいインドカレーを作る羽目に。

 

そんな面倒くさがりの旦那さんが作ったとは思えない本格的なインドカレーが評判を呼び、オープンしてたった1年なのにお店は大盛況。また、お客さんにフリーで場所を解放しているので、たまにヨガやフラワーアレンジメントの教室や、音楽ライブなども開かれる。そこに来たお客さんがまたお客さんを呼び、このカレー屋に人が集まってくる。移住してまだ間もないが、地元との結びつきを大事にし、子育て中の若い奥さんや子供たちの拠り所となっている。

こだまやはただのカレー屋ではない、地元の公民館のような場所だ。子供たちの明るい笑顔と、優しいカレーの味、そして穏やかな空気。移住してこんなお店が生活のそばにあったらどんなに安心だろう。


看板や庭にある流木の家具は、東金の流木作家の人がつくってくれた。

一見普通の民家だが、実はインドカレー屋さんなのだ。

畳の部屋に壁一面の本棚。畳に足を投げ出してついつい読書に集中 してしまう。

本格的なインドカレー。野菜のカレーにチキンカレーとバリエーション も豊富。